ひとこまコラムリターンズ 第22走者

本でつなぐバトン   2020/06/29更新 

『罪の余白』


『罪の余白』
芦沢央【著】
KADOKAWA/角川文庫
(2015/4)

 ある生徒が「おすすめの怖い小説ってありますか?」と聞いてきました。あいにく私は怖いお話が苦手で、あまり読んでこなかったため、どうしようと迷いました。
 その生徒が「湊かなえさんの『告白』(双葉社)が良かったから、そういう感じの本が読みたい」と言うので、どんな話がいいかなと考え、頭に一冊の本が思い浮かびました。それが芦沢央さんの『罪の余白』。
 この本は私自身が高校生の時に、国語の先生に勧められて読んだ本でした。
 学校司書として着任してすぐの頃に、芦沢央さんの『火のないところに煙は』(新潮社)が本屋大賞にノミネートされていると知り、『罪の余白』のことを思い出して、蔵書に入れたのでした。
 高校生にまつわる話なので読みやすいかもしれないと思い、私は彼にその本を勧めてみました。
 2週間後返却に来た彼が、「面白かった!この作家さんの別の本も読んでみたい」と言ってくれたので、ホッとしました。

 このコラムを書くにあたって、私も久しぶりに読み返してみました。
以前読んだときは、どうしても高校生たちの心情描写に共感することが多かったのですが、今回は高校生の娘を持つ父親や、その同僚の女性の気持ちや行動にも共感し、納得させられることが多かったです。時間が経つと抱く感想も違ってきて面白いものです。

 自分が高校生の頃に先生から勧めてもらった本を、司書になって生徒に勧めるという経験をしたことで、本のバトンをつなぐことができたような気がしました。



<吉村麻希>
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