ひとこまコラムリターンズ 第29走者

「みんなの本棚」での出会い   2021/1/28更新 

『もうぬげない』


『もうぬげない』
ヨシタケシンスケ【著】
ブロンズ新社
(2015/10)

 学校司書として着任し、初の読書週間。せっかくなので生徒が参加できる企画がしたいと思い、来館者自身で本を展示してもらう「みんなの本棚」を実施しました。
 展示もほぼ埋まり、そろそろ展示替えを…と思っていたころに設置されたのが、ヨシタケシンスケさんの『もうぬげない』。展示する時につけてもらうコメント欄には「服がぬげなくなったときに」とあります。その一言が気になった私は、思わず手に取ってしまいました。
 ひとりで着替えようとしたけれど、お腹を出したまま脱げなくなってしまった男の子。この状況を何とかするべく男の子が起こす奇想天外な行動が可愛らしく、ページをめくる度にくすっと笑ってしまいます。ただただ面白い話かと思いきや、一つ一つの言葉にどこか深さを感じる、大人も子どもも楽しめる絵本です。この作品の著者であるヨシタケシンスケさんは数々の名作絵本を出されており、本校でも多くの作品を所蔵しています。どの作品も笑って楽しめますが、読了後、ふと自分の悩みが小さく思えてくるのがヨシタケ作品の魅力。友人関係や受験等、色々な悩みを抱えている高校生にこそ味わって読んでもらいたいです。
 他の人からのおすすめやPOPに書かれた言葉が本を読むきっかけとなった経験は、誰しもあると思います。生徒からの「おすすめの本は?」という質問に苦戦する毎日ですが、生徒の背中を押す一言が伝えられるよう、司書として日々精進していきたいと思います。



<田原>
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