ひとこまコラムリターンズ 第7走者

予測不可能な時代こそ司書っスね!   2019/02/12更新 

『サピエンス全史1』 『サピエンス全史2』
















『サピエンス全史〈上、下〉―文明の構造と人類の幸福』
ユヴァル・ノア・ハラリ【著】 柴田 裕之【訳】
河出書房新社
(2016/09発売)

 「『サピエンス全史』ありますか!」
 元気よくカウンターにやってきた三年生男子。ちょうど貸出中のため、予約を薦めた。
 「えっ、読んでる人がいるんスね?誰スか?」
 「それを言うわけにはいかないなぁ」
 「そうなんスね!えっ、誰だろう。この本読んでるとか、頭いい人ッスよね?すごい人ッスよね?尊敬しちゃうッスよ!」
 利用していたのは教員。顔のニヤケを必死でこらえながら「そうだね。頭も良いし、すごい人じゃないかな?」と答えた。著者の別著『ホモ・デウス』でも同じやりとりをしてから、彼は予約をして帰って行った。
 読む人はすごいし、内容もすごいと思わせるのが『サピエンス全史』だ。著者のユヴァル・ノア・ハラリは歴史学者で、我々ホモ・サピエンスがどのように生物の頂点にのし上がったのか、有史以前の出来事から紐解いていく。頂点に至るまでの重要な三つの革命や、文字の発明、それらの情報を管理する目録の話など、興味深い内容ばかりだったが、中でも印象深かったのは歴史を学ぶ目的だ。
 著者によると、歴史は未来を正確に予測するために学ぶものではないという。ではなぜ学ぶのかというと、我々の前には想像が付かないほどたくさんの可能性があることを理解するためだ。我々が当たり前だと思う現代の常識や規範、システムは必然の産物ではない。そしてそれらはこの先いくらでも変わる可能性がある。常に自身の価値観を点検し、必要に応じて更新していかねば時代遅れとなりかねない。
 だからこそ、これからの図書館の役割はますます重要になると私は考えた。図書館で様々な考えや価値観に触れて、世の中にとって最善と思う選択をしていく。自分の頭で考え続けること、選び続けることはとても労力がいることだが、適切にそれをサポートできる図書館司書でありたいと思わせられる内容だった。

<丸山 慶子>
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