ひとこまコラムリターンズ 第76走者

人と時をつなぐ紙飛行機 2025/02/03更新

『世界チャンピオンの紙飛行機ブック』
『世界チャンピオンの紙飛行機ブック』
 John M. Collins【著】久保田晃弘【監修】金井哲夫【翻訳】
 オライリー・ジャパン
 (2019.08)

 館内のソファ席には折り紙と一緒にこの本が置いてあります。読書に苦手意識がある生徒でもリラックスしてほしいという思いから始めたことでした。
 最初は見向きもされませんでしたが、1人が折り始めると、紙飛行機が紙飛行機を呼ぶ展開となり、次々と紙飛行機を作りだしました。いつの間にか本の内容とは関係なく鶴やウサギなど様々な作品が生み出され、館内の至る所に並びだしました。折り紙が苦手な子は近くにあるホワイトボードにお絵かきを。読書以外の図書館での楽しみ方を見つけてもらえたようでした。
 ある日、出勤すると見覚えのない作品がひとつ。とても細かく折られた鹿でした。傍にあったホワイトボードにも変化があることに気づきました。「とても上手ですね」という言葉が添えられていました。どちらも定時制の生徒によるものだと後から教えてもらいました。たった一言だけど、読んだこちらも心があたたかくなる言葉でした。絵を描いた本人に伝えると嬉しそうにそのコメントを写真に撮っていました。それから他の人が描いたイラストの近くに「うまい!」と書いて帰りました。
 今でも館内の棚やホワイトボードには少しずつ作品が増えています。館内では危ないから禁止していたのに。いつの間にか、人と時を結ぶ紙飛行機が飛んでいたようです。


<ツナマヨ>
バックナンバーに戻る