ひとこまコラムリターンズ 第77走者
少しずつ 2025/03/03更新
![]() 『放課後の音符』 山田詠美【著】 新潮文庫 (1995.03) |
あるときフラッと現れて、太宰を借りて行った女子生徒(以下太宰の君とします)。貸出返却のたびに少しずつ会話を重ねて、気づけば常連さんに。そんな彼女が今日は友達を連れている……。気になって話しかけてみると、その友達が思い出の本を探しているとのこと。ビビッドピンクに女の子が2人の表紙。少女間で交わされる友情や恋の話。当時読んでいた雑誌で紹介されていて、気になって学校図書館にリクエストしてとても気に入ったそう。これは司書の腕の見せどころ!その日は用事があるとのことで「宿題にさせて!」と別れて大捜索するも、ピンとくる本は見つからず。あまり日が経たないうちに2人で再来館してくれたので、もう少しヒントを引き出すため『ふたりのロッテ』は違う?もっと濃いピンク……など話しているうちに、タイトルに「放課後」が入っていたことを思い出したとのこと。すかさず太宰の君がスマホで画像検索すると、山田詠美の『放課後の音符』であることが判明しました。
生徒と1対1で本の話ができるようになるのもうれしいですが、太宰の君にとって図書館が安心して過ごせる場所になれたこと、その友達が彼女を介して図書館に出会ってくれたこと、図書館が結ぶ輪が少しずつ広がる光景に出会えたことが何よりの収穫でした。
と、小奇麗にまとめましたが、当然司書としてもっとアンテナを張っておかねばと情けなさを感じる出来事でもありました。反省して精進します。
<図書館の桃>