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土曜講座2010

 平成22年度に開催された土曜講座です

第1回 6月4日

201001講師 内海 邦一氏(48回生) 放送作家
演題 「目指せ!みんなの人気者!!~テレビ制作のノウハウから学ぶコミュニケーション能力アップ術~」

 まず、すぐに内海先生が語られたのは、「正式な拍手の方法」。それで最初から盛り上がってしまいました。あとで「正式な拍手などは無いが、講習の参加者の気持ちをつかむため」ということがわかりました。その実例のように、話はツカミが大切ということを、具体的な例をいくつか示されました。ネタとしてちょっとしたマジックも教えていただきました。
演題は『目指せ!みんなの人気者!!』ということでしたが、講演に一貫して流れていたのは人の心をつかむコミュニケーション能力を向上させる方法でした。先生は8つの話題をパワーポイントで大きく示され、参加者の希望する内容から順にインパクトのある内容をコンパクトにお話してくれました。
最後の質疑応答では、テレビ界の裏話もたっぷり聞けて楽しいひと時でした。参加した生徒は80名。将来マスコミやテレビ界で働いてみたい夢を持っている人から、引っ込み思案だからコミュニケーション術を身につけたいという人まで、動機は様々でした。しかし、ほとんどの皆さんが満足度100%という講義内容でした。先生は湘南高校生時代から勉強以外で自分が光る道を探り、クラスを盛り上がらせるにはどうしたらよいか考えていたそうです。今でも自分の夢を追いかけて元気にエネルギッシュに活躍されている先生の話に私たちは大きな勇気をいただきました。

第2回 7月3日

201002講師 小野 正典氏(42回生) 弁護士
演題「日本の刑事裁判―お白州の時代から裁判員裁判まで-」

 犯罪とはなんだろうか? たとえば人を殺害しても罪に問われないことがある。それは・・・」という際どい内容から、先生は静かに語られ始めました。先生は長年の刑事裁判の経験に基づいて、日本の刑事裁判についての歴史的な流れを解説されました。そして日本の警察・検察・裁判所がどのように犯罪に向かうかということが良く分かりました。「グレーは白」か「グレーは黒」かという、象徴的な命題が印象に残りました。
現在、先生は、日本の裁判員制度を推進する責任者としてがんばっておられ、なぜ、裁判員制度が必要であるのかについて説明され、私たちもよく理解できました。今後の日本の裁判の方向性はこの裁判員制度にかかっているということで、将来、選任されるかもしれない会場の高校生は先生の話を伺って、「しっかりやりたい」という市民の正義感を確実に持ったと思います。
先生は、湘南高校時代はバレー部に所属し、関東大会にまで出場されました。そして東大に入学、司法試験合格後は、権力に対抗するという気持ちで弁護士の道を選ばれ、以来、刑事事件を中心に活躍されており、ロッキード事件の裁判で弁護人を務められました。本校が推進している、「極めて高いレベルでの文武両道」「社会の優れたリーダー」を体現した一人の先輩であり、「将来先生のような弁護士になりたい」と感想を述べた生徒が大勢いました。

第3回 10月23日

201003講師 宮 晶子氏(48回生)  荏原エンジニアリングサービス(株)・(社)日本水環境学会副会長
演題「水処理から水ビジネスへ」

 男女雇用機会均等法が施行される前の女性研究者を取り巻く状況からお話が始まりました。
「5年後に入社してきた若い男性社員よりも給料が安かった。」という状況下にあって、逆に女性ならではの感性によって研究者としての地歩を固めた宮先生の静かな力をまず感じました。お話の内容は日本の水に関する公害問題の歴史から、それを解決するためとられてきた法の整備のお話があった後、先生のご専門である水の浄化技術についてお話がありました。浄化技術は100年前に作られた活性汚泥法という方法が現在も使われていること、多くの微生物の中からある汚れを解消する力を持った微生物を見つけ出す研究、超純水を半導体製造に使うことなど、さまざまな水に関する知識が豊富に登場し、研究の奥深さを知ることができました。
最後の質疑応答の中で、先生は水道の水はきれいだと思いますか?という質問がありました。「冷やして飲むとおいしいですね。(当然飲んでいます)」というお答えでした。水研究の権威にお墨付きをいただき、日本の水道水は安心して飲めるすばらしい水であると再認識いたしました。また、研究者を目指す女生徒について、「女性ならではの視点があり、ある意味有利ですよ。」というアドバイスもいただきました。今回の講演内容は、普段は耳にする機会が少ない水の浄化についての専門的なお話であり、私たちは水を取り巻く状況について多くのことを知ることができました。有機化学の構造式などが出てくるとさすがに難しい感じがしましたが、参加した生徒の中には「先生の講座の内容を完璧に理解できるように勉強をがんばりたい。」という感想もあり、よい刺激になったと感じました。

第4回 11月6日

201004講師 尾島 巌氏(39回生) ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校首席教授・研究所長
演題「医学薬学境界領域での最前線の研究」

 尾島先生は今回、ニューヨークからこの土曜講座のために来日していただきました。ノーベル賞候補にも名を連ねている科学者が湘南の後輩のためにです。尾島博士は現在ニューヨーク州立大学=SUNY=ストーニーブルック校化学部首席教授、ストーニーブルック創薬研究所所長をされております。そして医薬化学部門の「Hall of Fame」(医薬化学の殿堂)に推挙され殿堂入りを果たしました。 「医薬化学の殿堂」は過去40年間の医薬化学の分野で、顕著な業績を認められたノーベル賞受賞者を含む、世界の研究者49人が入堂しましたが、尾島先生はその中の一人です。
そんな、尾島氏が「レベルを落とさないでお話します!」と宣言され、氏の研究分野である医薬分野の有機化学についてたっぷりとお話していただきました。今回、氏の英語で書かれた論文をセミナー室の前に貼り出しました。当然高校生レベルをはるかに超える構造式や写真が示され、参加者は覚悟して先生のお話に耳を傾けました。お話の中心は、癌の化学療法は副作用が激しいので、いかに正常細胞を害さず、癌細胞にだけ作用する薬を作るかという先生の研究の最前線のものでした。画面いっぱいの化学構造式を示され、ある一部を指し、この部分をミサイルのように飛ばして癌細胞を狙い撃ちして爆発させる(薬の効用を発揮させる)・・という話を伺っていると、博士の研究のすばらしさに一同は感動を覚えました。総じて、講演を聴いた大半の生徒の反応は、「難しかったけれど、とっても面白かった。」でした。博士が、レベルを落とさず情熱を注いで熱演してくださった 100分あまりは私たちに化学研究の夢をたっぷりと与えてくれるものでした。最後の質疑応答では化学を志したい生徒からの質問に、ていねいにお答えいただきとても充実した講演会でした。

第5回 12月18日

201005講師 山田 不二子氏(54回生) 山田内科胃腸科クリニック副院長,
NPO法人こども虐待ネグレクト防止ネットワーク理事長
演題「NPOが国の縦割り行政を打破する!? ~子ども虐待防止活動を通して知った縦割り行政の弊害~」

 山田氏は内科の医師で伊勢原でご主人と開業されています。そこで地域医療の仕事をしているうちに、親の幼児に対する虐待の状況を知り、虐待防止のNPO活動を始められました。講演では、子ども虐待・ネグレクト対応における日米の違いについてのお話がありました。虐待の状況はどうしてもあるそうで、それにいかに対応するかというときに、アメリカでは医療・警察法務・児童相談行政のそれぞれがチームを組んで取り組んでいるのに対して日本では3者が独自の立場で単独行動を取り、しかも境の壁が厚いそうです。その結果「虐待による死亡」という最悪の状況も生まれていることを指摘し、それを打開するためのNPO活動の重要性についてとても強く語られました。縦割り行政の弊害は一般的によく指摘されるところではありますが、子どもの命にすぐに係わってくるという意味で、山田先生はその改善を強く訴えます。今回の土曜講座参加者は、社会問題に関心を持っている生徒や教育に関心を持っている方々が多かったようです。山田氏の生き方は自分の職業だけでなく、社会改善に積極的に係わってゆこうというものです。そういう部分に生徒の多くは感じるものがあったようで、質疑応答でも突っ込んだ良い質問があり、山田氏にはそれぞれに対し熱く答えていただきました。受講者は社会改善のためにはNPOに所属するという手段があることが知りました。

第6回 2月5日

201006講師 沢木 順 氏 (本名 鈴木 毅 氏)(第39回生)ミュージカル俳優
演題「ミュージカル俳優が語る 歌・踊り・ドラマの世界」~オペラ座の怪人、ミュージックナンバーを大いに語り、大いに歌う

 沢木氏が会場に入ってきたとき、空気が和やかで明るい色に変わりました。沢木氏は講演の初めから終わりまでずっと会場をその雰囲気にしたまま、私たちの心を掴んで離しませんでした。 まず、会場の高校生に向けていろいろなお話をしていただきました。「人は守るべき人がいると強くなれる。」「高校時代はいやなことも含め、なんでも勉強したほうがいい。」「自分は、高3の秋になりいよいよ追い詰められたとき、50分勉強して10分休むというリズムを延々と繰り返して集中した。」などなど、ご自身の若いころを振り返って会場の高校生にメッセージを送ってくださいました。そして「自分は主役をやれと言われて5日で台詞から演技から歌から全部覚えた。それは高校時代のあの集中力があったから。」というお話を伺うと、なるほど湘南の先輩らしいと納得いたしました。先輩は水泳部のOB、やはりあれもこれもがんばる湘南生の一人だったのでした。 お話の合間には、歌や踊りの話をたっぷりとしていただきました。ミュージカル『マイフェアレディー』で恋にときめく若者のハリのある歌声を披露したかと思うと、『美女と野獣』のしわがれた歌声を披露するといった具合でした。さすが劇団四季で長くスターを務められ、今も一人ミュージカルで活躍されている沢木氏ならではの幅が広く奥が深いステージでした。 「この会場の中では僕が一番年上ですね。」とおっしゃいましたが、会場の誰もが沢木氏のほうこそ、誰よりもハリがあり、誰よりも輝いていると思いました。沢木氏はそうした秘訣のひとつ「若さを感じさせる姿勢」についてを、実際に会場の全員を立たせて教えてくれました。私たちは凛とした若々しい立ち振る舞いについてよく理解できました。こうして私たちは、沢木氏の生き様に触れ、めいっぱい元気付けられました。帰りに会場を出て行く皆さんの顔も歩き方も、とても満足げで凛としているように感じられました。