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土曜講座2011

 平成23年度に開催された土曜講座です

平成23年度 第1回 6月4日

201101講師 片岡 泰之氏(80回生) 2010ノーベル賞受賞式に招待された新進気鋭の研究者
演題 「グローバルに活躍する研究者になるためには - 私が高校と大学で学んできたこと-」

 片岡氏は、2010年 ストックホルムにおけるノーベル賞受賞式に招待された、世界で25人の新進気鋭の研究者のお一人です。 お話は、湘南生の恒例の自己紹介から始まりました。「80回生、オレンジ、競技パートリーダー、バスケ部! 自分はそれほど勉強もせず優秀な人間ではありませんでした。」。高校時代からご自身がどのような生活をおくり、目標を立て、世界に挑戦する意欲を持ち今の研究職に至ったかという具体的な経歴のお話の後、ご専門の制御工学の話が始まりました。 物理の理学的なところと実際の機械工学的なところとの非常に密接な部分を研究のフィールドとされていたということ、そして現在はヒューマンインターフェースを研究されている。さらに将来は、高齢社会に実際に有益になる分野を開発してみたいという強い意志を氏の話から伺うことができました。とても高校生に分かりやすく、また、少し背伸びをして突っ込んで聴いてみたくなる様な内容でした。一人の湘南生の先輩の生き方を示していただき、後輩の湘南生に大いに参考になるものでした。 また、後半で「グローバルに活躍するために、湘南生としてするべきこと」とは何か?という湘南生へのメッセージとして"Glocalization"という造語を紹介していただきました。大きい夢と希望を抱き大きく物事を考える(グローバル)と同時に、堅実に足元を固める行動を取る(ローカル)というような解釈をされ、実際に湘南生の生活に当てはめて分かりやすくお話していただきました。特に「今、自分の興味を広げるために努力をしていますか?」という問いかけは、忙しく目の前の事柄に追いまくられて動いている湘南生への貴重なアドバイスであると思いました。 最後にとても印象的だったのは、「湘南生の魅力は『総合的な人間力』であり、部活・行事・勉強の3本柱を懸命に追求することによって得られるものであり、それは、単に勉強が出来るというよりも遥かに有益な能力である。」ということを、現役湘南生に強く語っていただいたことです。一同、とても勇気をいただきました。 講演後、多くの生徒が質問し、氏のご好意で時間を大幅に延長して回答していただきました。

平成23年度 第2回 7月2日

201102講師 辻 章嗣 氏(46回生)
演題 「Viva 航空自衛隊」

 辻氏は、「航空自衛隊におけるファイター・パイロットしての経験を基に夢を追うことと、充実した日々を送ることの素晴らしさを紹介したい」と言う趣旨を述べられ、講演を始められました。 まず、「ファイター・パイロットの世界を観てみよう」と、映像でファイター・パイロットの世界を紹介しました。さらに、ご自身が着用していたヘルメットと操縦桿グリップをご持参されました。実際に触ることで、より実感を持つことができました。 次に、「ファイター・パイロットの夢を求めて」として、ファイター・パイロットの資格を得るまでの過程を紹介されました。ファイター・パイロットになる道は、本当に険しい道であることが伝わってきました。夢を追い続け、実現された話から、大きな夢を持つことの大切さと実現したときの喜びを将来の自分に置き換えて、心の中で膨らませることができました。さらに、対領空侵犯措置任務(所謂「スクランブル」)は、わが国の地理的特性や航空機の特性さらには外交的配慮等を常に意識しながら対応しているということを伺い、その任務の重さを改めて感じることができました。 最後に、「ファイター・パイロットが世界の国々を巡った2年間」というテーマで、特別航空輸送隊司令として経験した政府専用機の運航についての興味深いお話を伺いました。その中で皇族や首相とのエピソードにも触れていただきました。 辻氏は、「夢を持ち、夢を追求しよう」、そして「常に前向きの姿勢で充実した日々を送ろう」という生徒へのメッセージで講演を終えられました。 生徒の感想には、「夢はかなう。追い続けることの素晴らしさが伝わった」「命がけの使命。国防の大変さがわかった」とあり、「空より上の宇宙を目指します」というコメントもありました。

平成23年度 第3回 10月1日

201103講師 大島 武氏(57回生)東京工芸大学芸術学部准教授
演題 「好きな仕事につく方法 ~自己表現力を高めよう~」

 大島氏は、湘南高校時代の体験や思い出を随所に盛り込みながら、とても楽しくお話を進めていただきました。氏は「皆さんがペーパーテストで評価されるのはあとわずか。社会に出てからで評価されるのは、皆さんの自己表現力である」。ということで、自己表現力を高めるために次のような話をしていただきました。
【わかりやすい話をしよう】与えられた図を、その図を見ていない他者にどのように説明するかというゲームを行いました。そのゲームでのやり取りを踏まえ、さらにわかりやすくするために、次の5つのポイントを示してくれました。
① 大枠から話す:相手の知りたい順で考える(これから紙に図形をかいてもらいます)
② 具体的に話す:曖昧さは誤解のもと(図形は5つです。丸が2つで四角が3つです。丸の大きさは直径5cmです)
③ 話を構造化する:イメージがわく話しかたをする(より具体的に)
④ 相手の反応に合わせ、ゆっくり話す:自分が思っているよりもゆっくり話す(自分が知っていても相手が知らなければ、情報処理のスピードに大きな差がある)
⑤ タイムマネジメントを常に意識する:時間を予告する(終わりがわからない話は長く感じる)
【表現技術を高めよう】非言語表現の活用例を4つあげてくれました。
① アイコンタクト:人の話を聞いているときに特に強く(私は聞いていますよと示す)
※大学入試や入社試験等のグループ面接では他の人が話をしているのをちゃんと聞いているかを面接官はみています。
② スマイルの効果:人は好意を示せば好意がかえってくる
③ 対人距離と親和的葛藤:人は相手との距離に応じて接し方を変えることでバランスを取りたがる
④ ビジュアル表現:人は視覚から最も多くの情報を取り入れているため、見た目(表情、服装、髪型等)も重視する
※大島氏が「手を頭からあごまで動かしてください」(聴覚情報)と話しながら、言葉とは違う動作で手の動きを頭から頬で止める(視覚情報)という実験をしました。この実験では、ほとんどの人の手は頬で止まってしまいました。視覚情報で判断している人が多数だったわけです。
【25歳までに考えておいてほしいこと】『万能感の崩壊』(人は成長するにつれて、自分にできることとできないことがあることを認識する。万能感の崩壊は大人になる大切な課程である) 「幼いとき自分は何でもできると思っているが、だんだんできないことや苦手なことがあると気づく。挫折することもある。学生時代はそういうことを見つける大切な時代である。しかし、得意なことや好きなことにも気づく。職業の選択にはこの過程が不可欠である。いろいろなことに挑戦し、自分の持っている能力について25歳までに見つめなおしてほしい。」 講演後、多くの生徒から質問があり、氏もいろいろな質問が出たことを喜び、熱心に回答していただきました。 アンケートでは、『万能感の崩壊』に関する感想が多く、進路を考えている(悩んでいる)生徒にとって 心に響いたようでした。

平成23年度 第4回 11月12日

201104講師 勝俣 英雄氏(51回生)大林組技術研究所 副所長
演題 「地震大国日本で安全で快適な建物を目指して ~高強度材料と制振技術の可能性~」

 勝俣氏は、日本が世界に誇る建築物の制振技術における第一人者です。昨年(平成22年)9月にはTBSテレビ「夢の扉~NEXT DOOR~」に出演され、『―絶対に揺れない技術で、地震をなくしたいー 震度5強の地震でも建物の中に立てた鉛筆が倒れない!「スーパー免震技術」』と題してお話もされています。
氏は「私は東京スカイツリーにも採用されているような高強度材料と制振技術を用いて、地震にも安全で、普段も快適な建物を作りたいと思っています。一方で、将来どんな地震が起きるかわかりません。私たちの世代で出来るだけ対策をしたいと思いますが、想定外の被害が起きるかもしれません。そのときは皆さんがたくましく日本を復興させてほしいのです。私の仕事がそのときに役に立てば幸いです」と述べられました。
また、「普段の暮らしが大事で、耐震は非常時への備え(保険)であり、耐震(保険)が普段の暮らしを圧迫するようなことがあってはならない」と、御自身の建築の制震技術への考えを述べられました。その後、過去の震災とこれから予想される地震、発生地域、さらに想定内・想定外についてと話題を広げ、想定外にも対応できる準備の大切さを強調されました。
講演後半では、ご自身が開発にかかわった高強度材料について、特に炭素繊維、高強度鋼材、高強度モルタルについて、実験ビデオをおりまぜ、各材料の優れた機能とその活用方法を紹介され、さらに免震と制震についての違いを、ご自身がこの講演の為にご家庭で自作準備された実験の映像をもとに、それぞれの課題と対応策、さらに実際に活用されている様子を交えて説明していただきました。最後に、最先端の免新技術であるアクティブ免震の紹介とその実際例、今後の展望に話が及び、将来は安全で安心な世の中をつくることが可能であることを示していただきました。
質疑応答のコーナーでは、湘南高校時代の同期生で同じラグビー部で一緒に3年間を過ごした加藤副校長から「何で地味な研究を続けられたのか」という親しい仲ゆえの遠慮のない質問に対して、「確かに地味な仕事で華々しさはなく、若いころはそう思ったりもした。でも、誰かがやらなければいけない仕事で、それを私がやるんだと肯定的に考えてきた。自分の性にも合っていて、今はこの道を選んで本当によかったと思う。」と示唆に富む回答をされ、その場にいた生徒も深くうなずいていました。
参加した生徒によるアンケートでは、「最先端の技術が、東京スカイツリーだけでなく、自分の身近な場所で使われていることに驚きました。」「過去の震災を振り返り、これからの安全に向けた備えの心構え、特に、想定外の出来事に対する準備の必要性を強く感じました。」等の感想が寄せられました。

平成23年度 第5回 12月17日

201105講師 小林 玲奈氏(77回生)青年海外協力隊 ガーナ派遣
演題 「違い」の中から見えてきたもの
~そこにはいつも、すてきな出会いがありました~

 小林氏は、横浜市の小学校教諭から青年海外協力隊に応募し、2年間ガーナに派遣され、小学校教諭として活躍されてきました。現在は被災地ボランティアなどを行っています。
講演では、湘南高校時代に仲間の大切さを学んだこと、大学時代には教育と海外に関心を持ったこと、そして小学校の教員となり、特に初めて担任として受け持った子供たちからいろいろなことを教わったこと、そこでの経験からもっといろいろ教えたい、海外の子供たちに日本ことを知ってもらいたいという気持ちから青年海外協力隊に参加したという思いを熱く語られました。
また、ガーナの現状や協力隊の活動内容を紹介し、不便な中、苦労を熱意で乗り越え、その結果いっぱいの楽しみ、特に現地の人との交流を体験できたというお話は、海外での活動に興味はあるものの不安を持っていた生徒たちに大きな勇気を与えました。「無いなら作ろう」と具体的にいろいろな教材を工夫し、その実物を見せていただいたときは、参加した生徒は本当にぐいぐい引き付けられていました。
最後に、「普通のことが幸せ」と感じたこと、「多くの人との出会いからさまざま価値観を認め合うことができた」とまとめられ、その思いを再び小学校で伝えたいと締めくくられました。
質疑応答では、「学生時代にどんな準備をしていればいいのか」という質問に対し、「語学も大切だが、自分の強みにしたいことを勉強しておくことが役に立つ」「コミュニケーションは、伝えたいという思いが大切」と答え、湘南高校での学びに大きなアドバイスをいただきました。講演会が終わってからも、多くの生徒が集まり楽しそうに、そして真剣に質問をしていました。年齢が近いというだけでなく、講演の内容が生徒にとって今一番気になっていることと深く結びついていたことが感じられました。
参加した生徒によるアンケートでは、「『ライフワークとしての国際協力』は私の夢のひとつなので刺激になりました」「日本人が海外で活躍しているのを見て自分も世界へ飛び出したくなりました」「日本を基準にしていましたが、視野が広がりました」「言葉も文化も価値観も違う人とのコミュニケーションを取り合うことの素晴らしさを追求したいです」等の感想が寄せられました。

平成23年度 第6回 平成24年2月4日

201106講師 螧201107原 恵子氏(51回生)
有限会社アベレ取締役社長 キャリアカウンセラ
講師 角田 浩子氏(52回生)
株式会社リクルート 進学総研グループ「キャリアガイダンス」編集長
演題 「大学には進学したけれど・・・」になるな!!

 社会で活躍する人材に求められるものは何か。どういう学生が企業に求められ、また求められないかを、身近な例を引き合いにお話いただきました。そして、講師のお二人に加え、二上武生氏(56回生:(株)リクルート)にも参加していただきました。
まず、講師の皆さんの湘南高校での活動が、社会人としての活動、特に新人時代にどう結びついていたかの話から始まりました。その中で、社会では「自分の意見を言えて一人前」「指示待ち人間は要らない」と上司に言われて苦労された経験から、「自分は学生時代に身につけていなかったこと、学生のうちにやっておいたほうがよかったことがあった。」と反省されていました。
次に、社会で求められている力は、①コミュニケーション能力、②外国語力、③主体性、 ④実行力、⑤チームワーク能力、⑥課題解決力、⑦既成概念にとらわれないチャレンジ精神であり、ライバルは外国人、公用語は英語という会社も現れてきていることを紹介されました。
また、企業は、①学生時代に何を学び取ってきたか、②これまで真剣に向き合ってきた経験があるかを着目していると説明し、ある企業の採用試験では困難な状況を乗り越えるにあたり、自ら課題を発見し、反省し仲間と協力して乗り越えた経験が評価されると紹介されました。
そして、社会に出るまでに、①自ら学習し、②自分の意見を言う、③あいさつをきちんとすることが必要であり、社会に出ることに希望を持つことが大切とお話されました。
一方、就職できない有名大学の学生の特徴として、①目的を持って学部などを選択していなかった、②やり遂げたものがない、③周りの状況を考えるのが遅い、④自分を知らない、⑤自己中心主義などを上げ、高校時代から自己発見をし、目的を持った進路選択をすること、さらに勉強し、好きなことに打ち込むようアドバイスがありました。
あわせてうまく就職できない学生の特徴は、①有名企業などの憧れから抜けられない、②今がんばれない、③感性がにぶい(何を求められているかわからない)こと、さらに離職する理由として①仕事が合わない、②人間関係がうまくいかないことを上げ、「主体的に自立した選択をしてこなかった」ことが原因であると指摘されました。
まとめとして、これからのキャリアのために「知っていること、やったことがあることを増やす」ことが重要で、「親子のコミュニケーションがポイントである」とデータを基に説明し、保護者の方には、①親と話をしている学生は進路選択に成功している、②社会に出ることや労働にネガティブな価値観を持っている親の子どもは、同様な価値観を持ちやすく就職に失敗している、③親の高校時代の話やこれからの話をお互いにすることで未来へポジティブな考え方が出てくる、④干渉型・無関心型はともにだめで、「好きなことをしなさい」では逆にあせってしまうことがある、⑤子どもは自分の考えを尊重して欲しい、放っておいて欲しい、相談に乗って欲しいなど、以上子どもの気持ちや、子どもを安心させ伸ばす言い方、逆に不安にさせてしまう口癖など、親としてできること、気をつけることをわかりやすく紹介していただきました。
第三部は、質問に答える形式でした。予定時間を越えて多くの質問が出ました。湘南生がより積極的になったことが感じられました。以下、やり取りの一部を紹介します。
Q お金と自分の好きなこと、どちらが大事ですか?
A 好きなことをやるにもお金は必要。二者択一でなくいっぱい悩んで、できたら工夫して両方とも手に入れるようにしましょう。
Q 学部の選び方は
A 今の時点で何が自分にとって一番大切か考えて決める。将来のことを怖がって、今の気持ちを変えるのはおかしい。
Q 高校生活を充実したものにするのに何が必要か?
A 部活動でもなんでも今やっていることに打ち込む。必要な情報から自分が判断することがもっと大切。英語で勝負したいなら、TOEIC750点は必要。また、英語の文を読んで、英語的な考え方で物事を捉えることも必要。
Q 犠牲にしたものがあるか?
A 何かに打ち込むためにできないことはあるが、犠牲というよりも「選択」であり、自分が、どちらが大切か考えて判断すればよい。
Q コミュニケーション能力を伸ばすには?
A みんなと話をする。先輩や先生など普段話さない人と話してみる。パワーポイントを使って発信力をつける。今やっていること、またはやってみたいことに少しチャレンジするだけで変わる。
Q 湘南の卒業生でよかったか?
A 本当によかった。友人、先生、先輩や体育祭行事等々、今ある自分の基礎は高校時代に培われた。
(講演会終了後も、多くの生徒が並んで質問していました)
最後のまとめで、「今いる環境のなかで、全力で取り組む」「難しいこと・新しいことに挑戦する」「いっぱい感動する」「日本、世界を支える人物になってください」と後輩にエールを送って締めくくられました。