展示のご案内

展覧会リーフレット

特別展 廃墟とイメージ
 ─憧憬、復興、文化の生成の場としての廃墟─


   「廃墟」は、かつて盛んであったものが、衰え、朽ちるという意味合いを含んでいます。18世紀頃の西洋風景画には、崩れかけた廃墟や古代遺跡がモチーフとしてしばしば描かれます。それは古代文明という古典の再発見であるとともに、自然に埋もれて朽ちてゆく巨大な人工物は、栄華の儚さ、人間の無力さを物語っているかのようです。日本では、石造の建物が少なく、湿潤な環境下において、木造建築が何百年も朽ちるままに遺される例はほとんどありません。ただし、自然災害や戦乱、家の没落により家屋や寺社が荒廃したという記録や物語をさまざまな文学や美術にみることができます。
   中世の鎌倉は武家政権による政治、経済の中心都市として繁栄しました。鎌倉幕府の要職を担った北条実時(1224~76)は、交易船を派遣して大陸の文物を舶載し、宋版一切経や唐物を菩提寺である称名寺に寄進しました。実時が晩年に建てた金沢文庫には収集した和漢の書物が収められ、歴代の当主に引き継がれましたが、鎌倉幕府の滅亡とともに主を失った金沢文庫は朽ち、書物の多くは散逸してしまいました。しかし、一族の滅亡後も多くの旅人がこの地を訪れ、在りし日の金沢北条氏の栄華に思いを馳せました。「金沢文庫」印が捺された書物は後世の人々の垂涎の的となり、五山僧は称名寺の池畔に遺された西湖梅を愛で、漢詩を作りました。つまり、「廃墟」は寺社復興のための原動力となるとともに、新たな文化を生成する場としても機能してゆくのです。
   本展では、日本における「廃墟」の表徴とその歴史を国宝・重要文化財など約100点からたどり、鎌倉武士が栄華を誇った故地から、「廃墟」の文化史について考えたいと思います。

           
主催 神奈川県立金沢文庫
後援 中世文学会
協力 横浜市金沢区役所
会場 神奈川県立金沢文庫
会期 令和5年9月29日(金)~11月26日(日)
休館日 毎週月曜日(10/9 は開館)、10/10、11/24
観覧時間 午前9時~午後4時30分(入館は4時まで) 
交通 京浜急行「金沢文庫」駅下車徒歩12分(品川より快特33分)
JR根岸線「新杉田」駅接続、シーサイドライン「海の公園南口」駅下車徒歩10分
(最寄り駅から金沢文庫への地図はこちら

当館に駐車場はございません(身体障がい者用を除く)。
  ご来館の際は、公共交通機関をご利用ください。
関連行事


    ボランティアによる展示解説  毎週 土曜日・日曜日・祝日 午後2時~ 午後3時~

主要展示作品
    種別   文化財指定   作品名   備考 (公開期間)
1 絵画 重要文化財 二河白道図 香雪美術館[前期]
2 絵画 国宝 六道絵 聖衆来迎寺
3 絵画 神奈川県指定文化財 一遍上人縁起絵 巻二(塩竈) 清浄光寺 [後期]
4 絵画 国宝 病草紙 京都国立博物館
5 絵画 重要文化財 法華経曼荼羅 本法寺[前期]
※文化財保護のため会期中一部展示替があります。
   [前期]9月29日~10月27日 [後期]10月28日~11月26日 

観覧料金


個人 観覧
区分 料金
一般 700円
20歳未満及び学生 500円
65歳以上 200円
高校生 100円
 
団体 観覧
区分 料金
一般 600円
20歳未満及び学生 400円
65歳以上 100円
高校生 100円

※備考 団体は20名以上

●中学生以下及び教育課程に基づく教育活動として入館する高校生は無料。
●障害者手帳/療育手帳/精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方は、手帳又は、スマートフォンアプリ「ミライロID」の手帳画面の提示で観覧料は免除(無料)となります。介助者の方1名も免除(無料)となります。
●図書閲覧室のみの利用は無料。
神奈川県立の他の美術館・博物館の有料観覧券の半券利用で、観覧料の割引サービスを受けられる場合があります。

次回展示予告

令和5年12月1日(金)~令和6年1月21日(日)

特別展 中世寺院の書物
―聖教とそのかたち