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魔法の本  2012/12/21更新 【チームつながる輪〜 #6】

『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』 『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』
喜多川 泰
サンマーク出版
(2010/11 出版)

 「本とか、嫌いなんだよね」「なるべく薄くてすぐ読み終わるやつ、ない?」
休暇中の宿題で、あるいは授業の課題で。しぶしぶ、図書館へやってくる生徒には、すかさずこの本である。できれば10冊くらい持っていたい。それくらいの実力がある。
「えー?これ??厚いし。字―細かいし。」文句を言いながらベンチに転がって読み始めた背中がやがて立ち上がり、前のめりになっていく。司書、にやり。こうなったら、ほぼ100%の確率で「あの、すげー面白かったです!」と返却に来る。読んでみると、(現実はそーうまくいかないし!)(その展開は、どうよ?)と突っ込みどころも満載なのだが、10代の素直な?心にはぐっとくる本であるらしい。確かに、(こんな素敵な大人いるといいな、ちょっと、人を信じてみようかなぁ)という気持ちにさせてくれなくもない。
 司書と同じにひねた感想を持つ子には『民王』(池井戸潤・ポプラ社)を。こちらに登場する大人はそれなりにダメで、汚れていて、モデルはあの人だな?と見当もつく。でも憎めない奴らなのである。人は可愛い、可愛いものですね。そう思って読み終えることができる。15歳からこっちはきっと、みんな人間というものを信じられる本を読みたい年頃、なのかも。

<佐藤 さやか>
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