ひとこまコラム バックナンバー

固さと柔らかさ   2013/5/30更新 【チームつながる輪〜 #11】

『これからの「正義」の話をしよう』 『これからの「正義」の話をしよう』
マイケル・サンデル【著】
鬼澤 忍【訳】
早川書房
(2010/05 出版)

 最近ではブームも落ち着いてきましたが、原書で読んでみたいという生徒もおり、ペーパーバック版も購入しています。やはり難しいのか、興味を持っても実際に読んでみる生徒はあまり多くありません。ですが、中学生の授業でも、出てくる具体的な問題などを紹介すると、真剣な面持ちで聞き入り、よりよい答えを考えようとしてくれます。まだまだ頭が柔らかい中学生諸君、こちらが思ってもみないことに気づくので、とても楽しいです。
 ある放課後、「来てください」と中一のAくんに連れられて辿りついたのは、この本が並んでいる「分類番号311」の棚。Aくんは『これからの「正義」の話をしよう』を指さして、「この本がここにあるっておかしいと思うんですけど……」と言います。「哲学の本だから、哲学のところにあるべきじゃないんですか」。生徒や教職員と様々な話をする仕事ですが、分類が間違っていると言われることはそうありませんので、ドキッとしながら話をしてみると、なんとご家族が哲学の専門家! 難しい話もいろいろと聞いているよう。本の内容や分類の話をしながら、この図書館では政治哲学という分類で並べているんだよ、と伝えて納得してもらいました。
 社会科学というイメージの強い本書でしたが、細分化した分類に囚われているのかも? と固くなった頭に気づかされた放課後でした。

<富田 直子>
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