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「ためらい」ながら考えて  2013/6/27更新 【チームひつじさん #12】

『ためらいのリアル医療倫理』 『ためらいのリアル医療倫理』
岩田健太郎【著】
技術評論社
(2011/10 出版)

 高校3年生が自主的に行っているという生命倫理を考える集まりに誘われました。医学部進学を目指す数人で昼休みにお弁当を食べながら、1つのテーマを1人の生徒が調べ発表し、その後ディスカッションをするという流れです。私は参加するといってもテーマに関する本のプリントを用意して配るくらいで、他に先生が1人いるものの基本的に生徒が中心で行われていました。
 その議論の中で「判例はどうなっているのですか?」とか、すぐに結論を「個人の問題」や「中立」という言葉で締めくくるのが、私の耳に残りました。恥ずかしがって発言ができないならともかく、この言葉で思考停止させているのではないかという危惧を感じました。みんな医師志望だから「医師の立場」で物事を考えるのは当然かもしれないけど、まだ医師じゃない今だからこそ考えられる事こそ意義深いのではないだろうか、医師になったら医師の立場でしかモノが言えなくなるだろうし、正論過ぎて議論の余地が生まれない……。なんだかなー、と私の中でモヤモヤしていた時に出会ったのが、この本です。「医師」と聞くと、なにやら立派な大先生なイメージがありますが、筆者が1人の人間としてためらい後ろめたさに悩みながらも医療に取り組んでいく姿勢に好感が持てました。
 白黒はっきりつかない問題だからこそ、生徒にはもっともっと今のうちから議論して欲しいものです。

<中村 知美>
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