ひとこまコラム バックナンバー

続編を待つ楽しみ、読める喜び2013/9/26更新

『丕緒(ひしょ)の鳥  十二国記』 『丕緒(ひしょ)の鳥  十二国記』
小野不由美 【著】
新潮社(新潮文庫)
(2013/07出版)

 十二国記シリーズ、待望の新刊が12年ぶりに発売されました。古代中国を思わせる異世界を舞台にしたファンタジーで、1992年に刊行された第一作『月の影 影の海』以降、長く読み継がれているシリーズです。今回出た『丕緒の鳥』は、サイドストーリーの短編集です。読み終えたあと、久々に訪れたこの世界から立ち去りがたくて、思わずシリーズ本編を読み返してしまいました。
 私がこの作品と出会ったのは学校図書館で仕事をするようになってからです。勤務校の図書館で所蔵しており、生徒から薦められて読み始めたところ、すっかりハマりました。若い主人公たちが、悩んだり迷ったりしながら「今自分がするべきこと」を見出し、覚悟を決めて前に進もうとする姿に励まされます。物語の世界に思う存分浸れるところも魅力で、生徒から「何か面白い本ない?」と聞かれたときに、よく紹介していました。
 ところが、あるときからぱったり新刊が出なくなってしまいました。生徒に薦めたい気持ちは変わらないけれど、今からこの作品を読み始めると、続編を待ちわびるもどかしさもセットでついてくるんだよな、と思うと何だか申し訳なくて、最近はこのシリーズを紹介する機会が少なくなっていました。でもこうやって新刊が発売され、続刊予定に「書き下ろし長編」執筆中、などと書かれているのを見たら、すっかり解禁モードです。新刊と過去の作品を一緒に並べて、新たな読者を十二国記の世界へ誘い、一緒に続編を楽しみに待ちたいと思います。

<田子 環>
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