ひとこまコラム バックナンバー

50音を使わない実験 2014/07/25更新  【チームやまゆり #25】

『りぽぐら!』 『りぽぐら!』
西尾維新【著】
講談社
(2014/01出版)

リポグラム[英lipogram](名詞)  特定の語または特定の文字を使わないという制約のもとに書かれた作品。

 本書は、3つの短編小説が5通り…計15編も収録されている。それぞれ使えない文字のルールが異なり、3つ目のレベルでは、1編で16文字(濁音・半濁音・拗音・促音も込むのでそれ以上)が使えない。
 読み比べると、表現方法だけでなく、登場人物の容姿・性格・人称等も変わっている!例えば、古典っぽく書かれている話がある。しかし、携帯電話や自動車が出てくると、一体どんな世界だろうか、それともこの家族が変わり者なのかと考えてしまう。ほかに関西弁で統一された話もある。
 多少強引な表現もあるが、改めて作者の才能と15編も書いた根性、そして文字の魅力に驚かされた。作者自身、本書を「実験小説」と呼んでいて、読み手の好みが分かれる一冊である。想像力を養うだけでなく、語彙力も身に付くので、横に各辞典を置いて読むと良いだろう。15人の絵師による挿絵にもぜひ刮目してほしい。
 本校の図書委員や、よく来る生徒へ貸したところ、「普通の小説にない表現が良かった」「よく思いつくなぁ」という感想をもらった。地味に紹介を続けたら、アニメ化していない小説の中で最も借りられている一冊になった。

<×き・す・ち・ぬ・ね・ふ>
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