ひとこまコラム バックナンバー

秘密が大好き 2014/09/02更新  【チームひつじさん #26】

『パンダ銭湯』 『パンダ銭湯』
tupera tupera【さく】 
絵本館
(2013/08 出版)

 常々思っていることは、「選書は難しい」ということ。特に絵本を買おうかなというとき、本当にいいのかな?大丈夫かな?と何度も頭の中をよぎります。生徒たちが図書館に来た時に、まずぱっと見つけて手にとって楽しめる絵本を置きたいと思うのですが、高校生の彼らに果たして受け入れてもらえるのか?「なんで絵本?」「なんだ絵本か。」という反応がコワイ。そんなはずはないのですけれど……。
 先日カウンターに展示していたこの『パンダ銭湯』を二人の女子生徒が一緒に覗いていました。この絵本、昔ながらの銭湯「パンダ銭湯」に親子3人?いや3頭?のパンダが訪れるという、それだけのお話。ところが番台を抜けて中に入ったパンダたちは黒色のシャツや靴下をどんどん脱いで最後に真っ黒なサングラスをはずします。するとその姿は!!と、このような展開です。これを読んだ彼女たち、最初は「料金500円って安くない?いつも行くスーパー銭湯、もっと高いし。」などと言っていたのですが、そのうちに「ねぇ、この本って読んじゃいけなかったんじゃない?」「すごい秘密知っちゃったよ。」「子どもには見せられないね。」などと真面目顔でこそこそ話しています。思わず笑いがこみあげてしまいました。この生徒たちが愛おしくなりました。
 この絵本の魅力は最近めっきり減ってしまった懐かしい銭湯の様子が描かれているところです。籐で編んだ脱衣かご、風呂上がりにグイっと飲む牛乳、乗っかると針がぐるぐる回るアナログ体重計、いつも会うなじみのおじさんとの軽いあいさつ。そして、出るタイミングをお互いにはかりつつ家路につく仲の良い親子。さほどかわいくもないパンダの日常の光景が心を温めてくれるのです。

<井上桂子>
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