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「石井さんはすごいですよ…」 2014/10/27更新  【チームひつじさん #28】

『世界の美しさをひとつでも多く見つけたい』 『世界の美しさをひとつでも多く見つけたい』
石井光太【著】
ポプラ社
(2013/09出版)

 「東北」コーナーに面出ししていた石井光太氏の『遺体―震災、津波の果てに』が立て続けに借りられたので、生徒に聞いてみたらK先生の授業で紹介されて読みたくなったのだということでした。『遺体』は東日本大震災後まもなく出版され、映画化されたものの、私は開くこともできないでいた本でした。K先生が来館し、そのことを話しつつ新着コーナーを何気なく眺めていたら、同じく石井氏の『世界の美しさをひとつでも多く見つけたい』を偶然見つけました。『遺体』を読んでいなかった私でしたが、同じ著者だと気付かず(スミマセン)に受け入れていたのです。K先生は早速借りていき、いつもより早い返却時「石井さんはすごいですよ…」と、石井光太氏の著作をなんと全てリクエストしていったのでした。
 『世界の美しさをひとつでも多く見つけたい』は石井氏のそれまでの仕事の道筋が書かれた自叙伝のようなものです。石井氏は、アジアを中心に、貧困の中で絶望の底に突き落とされた人々を訪ね歩いてきました。なぜあえて目を背けたくなるような虐待、差別など悲惨な境遇に苦しんでいる人々の中に入っていくのか。この本を読んで、彼の著作を全て図書館に入れるよう依頼したK先生の気持ちがよく分かりましたし、私もやっと『遺体』を読むことができるようになりました。この本は、絶望の中にあっても希望を求める人たちの姿を見つめることにこそ意味があると教えてくれました。どういう意味かは、ぜひ本書を手に取って読んでみて下さい。
 さて、新たに受け入れた石井氏の著作は一つのコーナーにあえてまとめず、週替わり位で、一冊ずつ展示しています。日頃このような本が動くことが滅多にない本校図書館でもぽつりぽつりと利用があり、石井さんはやっぱりすごい…と思うのでした。

<今井 紀子>
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