ひとこまコラム バックナンバー

「生徒のエネルギーに脱帽」 2014/11/18更新  【チームやまゆり #29】

『神輿大全』 『神輿大全』
宮本卯之助【監修】
誠文堂新光社
(2011/09出版)

 本校の最大のイベントは、なんといっても9月中旬に開催される体育祭だ。全学年のクラスを縦割りにして、9色のカラーを旗印にチームを組織する。2年から3年に進級する時にクラス替えがないので、前年度の体育祭終了時から次期"総務長"が指名され、1年かけて次の体育祭の準備をするという熱の入れようだ。総務長の下には大道具、小道具、仮装、競技、衣装、BB(バックボード)、会計の各パートリーダーがいて、それぞれの仕事を統括する。体育祭では、競技はもとより、大道具・小道具の出来映えや仮装のダンスに衣装、5.4×6.3mもある巨大なBBの絵も採点の対象となり、すべての得点を総合して優勝が決まるので、生徒はみな真剣だ。
 そんな体育祭をバックアップするのも図書館の大事な仕事だ。6月の文化祭が一段落する頃から、本格的な準備が始まる。ストーリーに合わせ5〜6パターンも作る衣装のデザインを考えたり、BBの参考になる資料を探したり、生徒は忙しく動き始める。図書館ではそんなニーズに応えるため、民族衣装の写真やイラストがたくさん載った本、「こんな絵を描きたい!」という注文に応えられる写真集など、常に体育祭で使えそうな本はチェックし、購入している。
 今回紹介する『神輿大全』もそんなニーズにより3年前に購入した本だ。神輿の「基礎知識から、歴史・製作・保管・修繕までを網羅した」この本は、神輿各部の見事な細工まで写真で紹介しており、まさに神輿本の決定版ともいえるものだ。
 実はその年の体育祭で、バックボードに神輿の絵を描きたいという生徒が資料を探しに来たのだが、生徒のイメージに合う写真が見つからなく悔しい思いをしていたのだ。その後、この本が出版され、「ああ、あのときにこの本があれば!」と思いながらも、またいつか使われることがあるかもと蔵書に加えたのだが、この本の出番はすぐ次の年に訪れた。
 生徒は自分でこの本を探し出し、そのまま借りていったので、最初は体育祭がらみだとは気づかなかったのだが、何度か貸出延長を繰り返し3ヵ月くらい借りていたので、BBの絵の参考資料だったのかと思うようになった。しかし、体育祭当日に姿を現したのは、小道具のひとつとして(といっても中道具くらいの大きさはあったのだが)、10名の生徒が元気なかけ声とともに担ぎ出した手作りの神輿だったのだ! 木材と竹、ダンボールで作られた神輿は、細かな飾りにまでこだわり抜いた見事なもので、観衆の目を引きつけた。この年、彼らは小道具と仮装の部で優勝し、総合優勝も勝ち取った。
 生徒のエネルギーは、すごい! そんな生徒たちが思う存分力を発揮できるよう、いつでもサポートができる、そんな図書館でありたいものだ。

<笠川 昭治>
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