ひとこまコラム バックナンバー

心に寄り添う1冊を  2015/05/25更新  【チームやまゆり #35】

『星やどりの声』 『星やどりの声』
朝井 リョウ【著】
角川書店
(2011/10発売)

 着任して間もない頃、オリエンテーションを終えた1年生が、すぐに図書館へ来てくれました。「司書さんのオススメする本を教えてください!」・・・彼女はどんな本を求めているのだろう・・・経験の浅い私はドキドキしつつ、朝井リョウさんの『星やどりの声』をお薦めしました。
 『星やどりの声』は、六人姉弟それぞれの視点で1章ずつ綴られた作品です。姉弟が抱えている想い、それをお互いに思いやり、受け止めながら物語は展開します。父親が遺した喫茶店「星やどり」の柔らかな雰囲気と、絶妙なタイミングで提供されるビーフシチューは、読んでいる私たちの心をも温めてくれるようです。
この本を借りていった彼女は、その後も足しげく図書館へ通ってくれました。卒業を控えたある日、「今までいろんな本を読んだけど、やっぱ、ウチのイチオシは『星やどり』だね。入学してすぐ、司書さんにあの本を教えてもらえて嬉しかった。ありがとう!」帰り際に、そう言ってくれました。
こちらこそありがとう。かけがえのない高校生活の中で、心に寄り添ってあげられるような本を、私はどれほど紹介できただろう・・・と、司書としては反省しきりですが。
 一人ひとりの心を支える本を、そっと手渡せますように・・・今日も試行錯誤の日々です。

<山成 亜樹子>
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