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子どものころに返れる小説  2015/08/25更新  【チームつながる輪〜 #38】

『しずかな日々』(講談社文庫) 『しずかな日々』(講談社文庫)
椰月美智子【著】
講談社
(2010/06発売)

 本校には「図書企画委員」という有志で集まった生徒たちからなる委員会があり、彼らは各クラスに一人ずついる図書委員の生徒をまとめる仕事をしてくれています。そのうちの一人の男子生徒から、「この本すごく好きなので、図書室にも置いてほしい。」と言われて置いたのがこの小説『しずかな日々』です。
 内容はタイトルにふさわしく、小学5年生の男の子の夏休みをただただ追いかけたストーリーで、何か大きな事件があったり、誰かが死んだりするわけではないのですが、著者の感性豊かな文章にどんどん引きこまれ、あっという間に読み終わってしまいました。
 小学生の視点から世界を見ると、世の中はわからないこと、知らないことばかりで怖いところ。だからこそ、植物のために庭に撒いた水しぶきが美しかったり、遠くから見た工場をロボットたちがおもちゃを作る工場だと想像したりなど、日常の小さなことに感動したり思いを馳せたりできます。その様子に、昔は自分もこの様なことを考えて生きていたなあ……となつかしさがこみ上げてきました。
 中学受験の入試問題に出る作品第1位でもあるらしいので、読んでみて損はないかもしれないですよ?
     

<大塚 麻菜実>
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