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クールな男を惚れさせたのは…・・・  2015/12/24更新  【チームつながる輪〜 #42】

『ハゲタカ』(新装版)
『ハゲタカ』(新装版)
真山仁【著】
講談社(講談社文庫)
(2013/09発売)

 中堅校に勤めていた際に出会った男子生徒の話です。
 彼は他の生徒よりも図抜けて学力が高いけれど、斜に構えた態度で先生方には扱いづらい生徒でした。しかし図書館にはよく顔を出して、私には気軽に話しかけてくれ、「うちの学校の生徒って本当に本を読まないよね。図書館を利用しないなんてもったいないよ」とこぼしていました。
 彼は政治や経済、時事問題に関する本や、本格推理小説から歴史小説まで骨太な小説を何でも読みこなす読書家でした。そんな折、彼に何かお薦めの本はないかと聞かれて紹介したのが、真山仁さんの『ハゲタカ』です。NHKのドラマや映画でも評判になった作品の原作本です。ハゲタカと呼ばれたニューヨークの投資ファンド運営会社の社長鷲津政彦が、日本に戻り瀕死状態の企業を次々に買収、再生する金融ビジネス小説です。
 この本を返却に来た彼は、いつもクールなのに、珍しく熱く「鷲津がめちゃくちゃかっこいい!」と語ってくれ、真山作品を全部読破してしまいました。真山作品は、新聞記者をなさっていただけあって、政治・経済・原発・地熱等、時代を先取りした社会派小説が多く、彼にとっては小説を読みながら、社会情勢を知るいい勉強になったようでした。
 その後彼は、開校以来初めての、超難関大の法学部に現役合格しました。今は、真山作品に出てくる様な立派な、社会人として活躍していることでしょう。

<安河内 康子>
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