ひとこまコラム バックナンバー

開かれる文学の扉  2016/10/24更新  【チームつながる輪〜 #52】

『花もて語れ』

『花もて語れ』
(ビッグスピリッツコミックス
スペシャル)
全13巻
片山ユキヲ【著】
小学館
(2010/9〜2014/09発売)

 学校司書1年目、あたふたしながら開催した初めての読書会、のちょっと後。次の読書会は宮沢賢治が読みたい!という生徒のリクエストで、2回目の読書会は『やまなし』を読むことになりました。短編集をめくりながら、「小学校の教科書に載ってた『やまなし』が謎すぎて、今でも意味がわからない」とは生徒の談。えー?そんなに言うほどぉ?と思いながら読むも、撃沈。確かにこれは難しい。困った司書が「やまなし……やまなし……」と呟いていると、数学科の先生が蜘蛛の糸を垂らしてくださいました。「『花もて語れ』っていう漫画に『やまなし』が取り上げられてるから読んでみたら?」
 『花もて語れ』は近年話題になった本格朗読漫画。引っ込み思案な性格だった主人公が、朗読に魅せられ、様々な作品の朗読に取り組んでいくお話です。もちろん作者の解釈が漫画にされているのですが、文章を読み込んで書き手の意図を理解しようとする朗読の姿勢と、途端に広がる文学の世界に驚かされます。
 肝心の読書会は、漫画のようにすっきりした解釈にはたどり着かなかったものの、笑いの絶えない楽しい会になりました。図書館でも購入した『花もて語れ』は、読書会参加者が借りていきました。どうやら参加者が順番に借りる様子。 小学校の頃に感じた疑問を、時間を経てもう一度じっくり考えるお手伝いが少しはできたかな?とにこにこしてしまう新米司書なのでした。

<奥村 由香>
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