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「本当に怖いものはないのか」「…絵本」  2016/12/21更新  
                                    【チームやまゆり #54】

『どこいったん』

『どこいったん』
クラッセン,ジョン【作】
長谷川 義史【訳】
クレヨンハウス
(2011/12発売)

 幼稚園への読み聞かせ実習に持っていく絵本を選びに来た生徒たちが、絵本コーナーをうろうろする秋頃、一人の女生徒がこの本をもってカウンターに来てくれた。おもわず「その本怖いけど(幼稚園の子に)だいじょうぶ?」と訊いてしまった。きょとんとした顔つきで、「怖いんですか?」とのこと。その場で一緒になって読んでみたけれど、どうやら伝わらなかったご様子。絵を指さし、「ここがこう怖いんだよ、だから面白い絵本なんだけど。」と余計なことをおしゃべりした後、別の絵本を選んでいきました。
 絵本も小説もなんでも、読み手が自由に受け取っていい、だから、どんな解釈をしても、どんな感想を持ってもいい。……いいんだけど。幼稚園生のトラウマにはなるまいか?『ねないこ だれだ』レベルで怖い本だと思うんだけど。児童向けから大人向けまで、絵本の世界は幅広くて、素敵な絵や不思議な物語や、子どもの時読んでもらった思い出までセットになっていたら、それはもう宝物のような一冊になっていくんだろう。
 さて、この絵本はというと、自分の赤い帽子を探していく、くまのお話。独特の絵のタッチ、目の鋭さと、関西弁のリズムでするすると展開していくその先が、怖いのです。
 授業で図書館に来た男子生徒が余った時間で、クラスのみんなの前でこの本を読み聞かせていたけど、地を這うような低い声色で読んでいました。……だよね。

<勝家 恵美>
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