ひとこまコラム バックナンバー

読まなくても・・・いいのか・・  2017/03/21更新  【チームつながる輪〜 #57】

『読んでない本について』


読んでいない本について
堂々と語る方法
(ちくま学芸文庫)

バイヤール,ピエール【著】大浦 康介【訳】
筑摩書房
(2016/10発売)







『『罪と罰』を』


『罪と罰』を読まない
岸本 佐知子/三浦 しをん/
吉田 篤弘/吉田 浩美【著】
文藝春秋
(2015/12発売)

 図書委員に、本のPOPを書いてもらうと、「読んでないよ〜」と言いつつ、それなりに書く。写真集でも図鑑でも、読まずに書ける、語れる本は確かにある。
 案外、この仕事をしている人もそうなのではないか。仕事柄、本についてはよく訊かれる。そんな時、どう対応するか、できるか。かなり開き直ったように堂々と論じてしまったのがこの本。
 とても学術的な文章なのに、笑いを誘う。
 『薔薇の名前』(ウンベルト・エーコ著)の謎解きでも、ある図書館の司書の行為についても、漱石でも。こんなに、読まずに語っている例があったのか。どう語るか、誰に語るかの設定までしてある念の入れ様。読まずに語ることってこんなにすごいこと、だった?
 誰でも読んでいるはずだ、と思われている本を読まずに語る。
 『罪と罰』を読まずに開いた読書会でも、かなり深い話に進んでいく。妄想全開のお遊びから始まった敢えて読まない未読読書会が、何だか壮大な座談会へ変化していく。あーだこーだと手探りで推理していただけなのに。
 あの本を読んでいなくても大丈夫。
 読んでいないことについて、こんなにも面白く、何となく深く考えた気になる、斬新な切り口の2冊。
 あなたは、読む?読まない?

<SIK>
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