研究会情報


2023(令和5)年度 冬期全体研究会の報告

2023(令和5)年度 冬期全体研究会 12月11日(月)かながわ県民センター

【午前:分科会(地区発表)】
○横浜北地区「「総合的な探究の時間」を実のあるものにするには?」(85名)
○湘南地区「読書会をやってみよう! 〜仕事のブラッシュアップ 第2期〜」(37名)
○県北地区「超初心者のためのGIGAスクールと学校図書館」(36名)

【午後:講演】
 講演「学校図書館における子どもの居場所づくり」
 西野博之氏(認定NPO法人フリースペースたまりば理事長)

 まず生きづらさを抱える子どもたちの現状、「いじめ」のピークが小2であること、中学生の17人にひとりが不登校であることなどの報告があった。そして不登校は命にかかわる問題であり、学校に行けない理由は本人にもわからない。問いただすより共感と受容が大事で、「大丈夫」という安心の種を大人がまこう、安全・安心で楽しければ学校に来る、との話があった。西野氏がかかわっている「フリースペースえん」では、子どもの権利条約にのっとり子どもをひとりの人間としてとらえ、禁止の看板をもたない遊び場、安心して失敗できる環境づくりをして、非認知能力や自己肯定感を高める活動をおこなっている。
 子ども家庭庁準備室がまとめた報告書で、居場所づくりの大切な視点として、「行きたい」「居たい(居ることの意味を問われない、評価されない)」「やってみたい」があげられているとの紹介があった。学校図書館にもこうした考えが参考になるだろう。
 質疑応答では、すぐ答えるというより、難しい問題だけれどもどうしたらいいだろう、一緒に考えていきましょう、というように話され、こういう風に子どもたちと接してこられたことを感じた。会場からは各校での居場所づくりの悩みや実践が報告された。
 参加者の感想には「児童生徒を支援しようとする際に大人に求められる、接する姿勢や具体的な手法について、原点に立ち返って考えるきっかけを頂いた。また、文部科学省やこども家庭庁における不登校や居場所作りについての現在の考え方を示して頂き、他の教職員との協働の際に必要となる知識のアップデートが出来た。」「ドキュメント72時間で「川崎市子ども夢パーク」を知り、とても印象に残っていました。 様々な特性のある子どもたちに大人が与えるのではなく、その子の興味関心を見極めながら待つ、そして子どもたちの話し合いを見守り尊重する姿勢は、学校図書館でもそうありたいという理想です。」などがあった。

2023(令和5)年度 夏期全体研究会の報告

2023(令和5)年度 夏期全体研究会 7月19日(水)かながわ県民センター

【午後:講演】
 講演「めちゃくちゃ楽しい学校司書! 学校図書館勤務未経験だった私が初めて勤務した学校図書館での5年間の実践を夏期全体研究会で話すって本当ですか!?(本当です!)」
 丸山慶子氏(神奈川県立保健福祉大学附属図書館 司書)

 前任校である横浜平沼高校に新採用で赴任してから5年間の、とてもエネルギッシュな学校図書館活動を報告していただいた。
 その取り組みは
・「出張図書館」(職員室前に設置・貸出OK)
・「職員室出張図書館」(職員室の自席机上に本を陳列)、
・「オリエンテーション内容の見直し」(絵本の読み聞かせなど)
・授業利用(家庭科・国語・世界史・保健体育・英語・総合での情報リテラシーや点検読書)
・自前の講座(夏季スタディショップでのレファレンス講座など)
・図書委員会活動(先生による「新年に送る一文」のガチャガチャ作り・学校図書館紹介動画作成など)
・養護学校(現・支援学校)分教室への貸し出し、近隣中学校生徒との交流(中学生限定の放課後図書館開放)など多岐にわたる。
 また、コロナ禍では、普段ではできないことを、と、チャンスととらえ、除籍作業をすすめレイアウト変更を行い、コロナで減った利用者を戻したいという委員長の発案で、図書館でeスポーツ大会を行ったという報告もあった。その実現に向けて職員会議資料作成に奔走する一方で、生徒を信頼して見守る姿に感銘を受けた。
 これだけパワフルな活動のモチベーションは、「生徒が楽しめる学校図書館を作って、生徒が変わっていく瞬間を実感するとき」とのこと。生徒の成長を支援する学校図書館の教育的側面について、改めて考えることができた。
 参加者からは、「丸山さんの実践は、日々研鑽や準備をしながら身に着けてきた底力と、目の前の利用者との丁寧なコミュニケーションとのかけ合わせでできあがっていったことがよく伝わってきました。」など、多くの感想が寄せられた。
 丸山さんがこころがけていたこと、としてあげていたのが、「生徒、教職員とのコミュニケーション」「積極的な情報収集」「自分にできることを粛々とやる」「各種統計データや記録を取る」だったので、参加者に十分報告の意図は伝わったのだと思う。

2022(令和4)年度 冬期全体研究会の報告

2022(令和4)年度 冬期全体研究会 12月1日(木)かながわ県民センター

【午前:分科会(地区発表)】
○川崎地区「学習支援としての教員への働きかけ〜プチ実践やってみた〜」
○横須賀三浦地区「つなぐ、しめす、どうぐらむ」
○県央地区「図書館に人を呼ぶ!Part2〜呼べないときは」

【午後:講演】
 講演「学校図書館の機能を教育に生かす−教室内外の学びと情報をつなぐために−」
 庭井史絵(にわいふみえ)氏(青山学院大学教育人間科学部教育学科准教授)

 まず最近の学校教育の変化と指導要領の改訂、GIGAスクール構想についてお話いただき、その後、新型コロナの経験を通して出てきた、学校図書館の変化と課題を踏まえて、学校図書館が何をしたらいいかについてご講演いただいた。
 参加者の感想として、「資料提供や調べ学習をする際、いつも『これでいいのだろうか…』というモヤモヤを感じていましたが、なるほどとすっきりした気持ちになりました」「『読書』という言葉の意味を再認識できた」「ネット全盛の時代に、どうすれば本へと導けるかを具体的に教えていただきました」などがあった。

2021(令和3)年度 冬期全体研究会の報告

2021(令和3)年度 冬期全体研究会 1月18日(火) GoogleMeetにて

【地区研究発表】 オンラインでのつながりの中、各地区の研究を経過報告した。

 横浜北地区 「コロナ禍における学校図書館の広報活動」
 横浜中地区 「日常活動の見直し」
 横浜南地区 「図書館の基準を考える」

【グループワーク】 
 グループワークでは、先に行った地区発表を受けて、各グループで興味のある内容をテーマにしてGoogle Meetによる話し合いを行った。
 「アナログとデジタルにおける広報活動」、「進路支援について」、「雑誌の廃棄について」が話し合いのテーマとして取り上げられることが多かった。
 話し合いにはJamboardを使用し、自分の意見を書き込み、そこから話を膨らませていった。事前に操作説明はしていたものの、初めて使ったので操作に時間をとられてしまった人も少なくなかった。今後のことを考えると、ICTツールを使う機会を作れたことは良かったかもしれない。
 コロナ禍で開催できずにいた研究会をオンライン開催でき、なかなか話す機会のなかった他地区の人と話す場を設けることができたのは良かった。話が盛り上がり、時間がもっと欲しかったというアンケート意見も多かった。

2019(令和元)年度 冬期全体研究会の報告

2019(令和元)年度 冬期全体研究会 12月5日(木) かながわ県民センター

【午前の部】
 分科会(地区研究発表)
第1分科会 横浜南地区 「図書館の基準を考える」

第2分科会 川崎地区 「授業との連携で学校図書館ができること〜先生、私たちこんなことできます〜」

第3分科会 県央地区 「図書館に人を呼ぶ!」

【午後の部】
講演 「そのとき私たちができたこと:東北大学付属図書館が遭遇した東日本大震災」
講師  小陣 左和子 氏 (東北大学付属図書館 総務課長)
 東日本大震災から9年、阪神・淡路大震災から25年。図書館関係者の中にも震災の記憶が希薄な世代が増えてきたが、いまや自然災害による被害は避けては通れない状況になってきている。小陣氏が図書館という現場で実際に遭遇した地震発生時の対応からその後の復旧までのお話を伺った。司書が震災に対する心構えを身につけ、対策を立てるための手がかりとなる貴重な機会であった。
 参加者の感想として、「毎日の心構えについて大切なヒントをいただけました。必ず来る震災に向けてもう一度見直しています」「『横のつながり』は本当に大切だと思います。saveMLAKや震災訓練プログラムは、初めて聞きましたので、勉強になりました」「記録を残す(遺す)大切さを改めて実感しました。百聞は一見にしかず、写真の力の大きさを感じました。被災という大変な経験をされたことを経験のない私達に伝えてくださったことに感謝申し上げます」などがあった。

2019(令和元)年度 夏期全体研究会の報告

2019(令和元)年度 夏期全体研究会 8月21日(水) 神奈川総合産業高等学校

【午前の部】
報告 「うるわしき工業系高校の世界」
講師  県立川崎工科高等学校      池上 貴子
    県立藤沢工科高等学校      横山 道子
    県立向の岡工業高等学校     山田 恵子
    県立商工高等学校        石塚 美智代
    県立横須賀工業高等学校     長谷 明子
    県立平塚工科高等学校      吉原 晶子
    県立小田原城北工業高等学校   安河内 康子

 神奈川の工業系高校の概要を皮切りに工業系高校のカリキュラム・検定/資格試験・進路についての説明を聞き、なかなか知る機会の少ない学校形態に驚きの連続だった。
 文化祭の中で行われる科展や系展、課題研究や授業での図書館の利用のされ方についても普通科とは一線を画しているように感じられた。間に挟まれる<工業系高校あるある?>に笑いを盛り込みながらも、特殊な蔵書構成、選書、雑誌選びからレファレンスまで司書の日々の奮闘が伝わるとてもいい報告であった。

<会員の感想より>「普段知らない工業高校のことを知ることができてよかった。」「図書館運営上の課題と工夫では普通科高校でも参考にできる部分が多くあり、参考になりました。」など

【午後の部】
講演 「『ポスト真実』時代のメディア情報リテラシーと学校図書館」
講師  坂本 旬 氏 (法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
 学校司書が、メディア情報リテラシーについて最新の情報や知識を身につけ、それらを生徒や教員に向けた学習支援に反映することは、重要な職務のひとつである。
 今回は、坂本氏が法政大学第二中学校等で実践したメディア情報リテラシーの授業について直接伺うことによって、各校での授業支援や教員との連携協力等について、各自があらためて考え実践していくための手がかりとなった。

<会員の感想より>「それぞれのリテラシー(情報・メディア・ニュース)について知ることができて良かった。」「だいじかなチェック、きざしかなチェックのようなすぐに使えるツールはとてもありがたい」など

2018(平成30)年度 冬期全体研究会の報告

2018(平成30)年度 冬期全体研究会 12月5日(水) 県立横浜平沼高等学校

【午前の部】分科会(地区研究発表)
第1分科会 横浜北地区
 学びのユニバーサルデザイン(UDL)

第2分科会 横浜中地区
 日常活動の見直し:授業利用と引継と

第3分科会 県北地区
 データコレクタ徹底活用:蔵書点検を中心に

【午後の部】
 講演 「ライトノベルと学校図書館」
 講師  大橋 崇之 氏 (東海学園大学人文学部人文学科 准教授)

 日本近代文学、現代日本のサブカルチャー、国語教育を専攻とし、『司書のお仕事 お探しの本は何ですか?』(勉誠出版 2018年5月刊)を著作とする大橋氏に、ライトノベルとその現状、中高生の読書状況、「読解力」と今後の読書教育等について、お話しいただいた。
 参加者の感想として、「ライトノベルと図書館について、多くの例でわかりやすく説明いただいてとても参考になった」「読書と読解力と図書館との関わりについて参考になった」「生徒に対してどういった働きかけができるかと考える機会にもなり、学校図書館の機能をきちんと発揮して行ける司書でありたいと思った」などがあった。

2018(平成30)年度 夏期研究会の報告

2018(平成30)年度 夏期全体研究会 8月28日(火) かながわ県民センター

【午前の部】
 報告 「はじめてみよう!マニュアル作り 〜スムーズな引継ぎのために〜」
        講師 県立二俣川看護福祉高校 濱野 美由貴
            県立鶴見高校      田村 修
            県立氷取沢高校     藤井 佳代
            県立麻生高校      青山 香澄
            県立海老名高校     中岡 仁
            県立綾瀬高校      大西 晶子

 一人職種である学校司書の仕事内容を混乱少なく引継ぐために、引継ぎ資料としてのスタッフマニュアルについての研究が継続している。その研究報告と、研究内容に基づいたワークショップを行った。
 前半は、現在使われている『学校図書館運営のためのスタッフマニュアル神奈川版』発行の経緯と、引継ぎの重要事項と考えられる項目についてのアンケート結果が報告された。後半のワークショップでは、『スタッフマニュアル』の記入例の説明の後、当日用意された『スタッフマニュアル作成ワークシート』2種類を各自で記入し、2人1組でそれぞれのワークシートを使った引継ぎを体験した。
 参加者からは「実際に説明しあうと不足している部分が分かった。」「他校の事例や説明を聞くことが出来て良かった。」という感想があった。


【午後の部】
 講演 「学校図書館と電子書籍貸出サービス LibrariE導入から3年目のレポート」
        講師  沖田 綾子 氏
            (日本体育大学柏高等学校メディアセンター 学校司書)

 日本体育大学柏高等学校メディアセンターでは、2016年から電子書籍の貸出サービスを開始している。同校の学校司書である沖田綾子氏をお迎えして、メディアセンター(来館型図書館)の概要と電子書籍貸出サービス(電子図書館)の概要、生徒の利用状況や授業での活用状況、利用してもらうための取り組み、そして電子書籍コンテンツの概要についても、お話しいただいた。
 質疑では、紙の書籍と電子書籍での選書の違いや、調べ学習での電子書籍の利用等についての質問があり、さらに詳しくお答えいただいた。
 参加者の感想として、「あまり関心を持っていなかったが、電子図書館がどのようなものか分かってよかった。」「今の来館型図書館を考え直すきっかけにもなった。」「電子図書館の話だったが、現行の図書館と共通することは多いと感じた。」などがあった。

2017(平成29)年度 冬期全体研究会の報告

2017(平成29)年度 冬期全体研究会 12月7日(木) 県立神奈川総合産業高等学校

【午前の部】
 分科会(地区研究発表)
第1分科会 川崎地区
 図書館の仕事再検討『生かす統計〜学校図書館で必要な記録と評価』

第2分科会 横須賀三浦地区 活動報告比較検討 発展編

第3分科会 湘南地区 仕事のブラッシュアップ術

【午後の部】
 講演 「学びの場をいかにして構築するか〜高等教育の潮流を示唆として〜」
 講師  同志社大学 学習支援・教育開発センター 岡部 晋典 氏

 同志社大学にある"ラーニング・コモンズ"にて、アカデミック・インストラクターとして活躍されている岡部氏をお迎えし、大学でのラーニング・コモンズの使われかたや、文部科学省の新指導要領に則した新しい学びについてのお話をうかがった。

<会員の感想より>
・大学の現状が中高の図書館の取組みの先にあることが分かってよかった。
・大学の先生が講師で来てくれたからこそ、かなりの研究結果データや知識、研究テーマなどを話してくれて大変勉強になった。
・アクティブラーニングの課題が分かった気がする。
・学びの場の構築は高校でも当てはまることがあり、大変参考になった。
・授業の組み立ては実際に考えてみて参考になった。他の方の案を聞いて初めて納得できた。これからこういう授業が増えるので図書館も対応できるようにとお願いされたところだったのでタイムリーだった。
・高校で図書館を中心に学んできた学生と詰め込み式で学んだ学生の違いが興味深かった。

2017(平成29)年度 夏期全体研究会の報告

2017(平成29)年度 夏期全体研究会 8月22日(火) かながわ県民センター

【午前の部】
 報告 「現司書と元司書が語る盲学校の日常」
        講師  県立平塚盲学校    池上みちる
            県立城山高校     大山 知子
 報告 「写真で綴るスクランブル・オムニバス」
        講師  県立厚木清南高校   鈴木 聖美
            県立鶴見総合高校   松浦 智美
            県立平塚中等教育学校 中沢 智子
            県立湘南高校     笠川 昭治
            県立神奈川総合高校  星野 好美

 1)「現司書と元司書が語る盲学校の日常」
普段あまり知ることのない盲学校の図書館について、新旧の司書お二人に話していただきました。  「目を貸してください」と言ってきた生徒とのやりとりから、盲学校ならでは学校生活におけるルールや利用者と資料との橋渡しの仕方など、点訳本などの図書館資料を使っての実演も交え、盲学校図書館の日々の様子を優しい語り口でわかりやすく伝えてくれました。

 2)「写真で綴るスクランブル・オムニバス」
スクランブルな図書館とは、スクランブル交差点のように一日中利用者が絶えることなく行き交っている図書館であり、利用者に対して常に緊急発進(スクランブル)できるよう対応する司書のいる図書館。そんな個性溢れる学校図書館の様子について、「新タイプ校」を中心とした5人の司書が、日々の業務さながらのスピードで入れ替わり立ち代り写真と共に説明してくれました。

<会員の感想より>
・勤務校と違うタイプの学校の話が聞けてよかった。「名乗ってから話す」、「音声読み上げソフト」の話など、そこでの「当たり前」が違うことを改めて考えた。(盲学校の日常)
・図書館のバリアフリーの参考になるとともに、視覚障害者の方と接する際の参考になった。(盲学校の日常)
・写真と説明のタイミング絶妙で見学した気分になれた。(スクランブル・オムニバス)
・図書館の様子だけでなく、他校の予算や蔵書数も分かり、参考になった。(スクランブル・オムニバス)


【午後の部】
 講演 「本を好きになってもらうことはできるのか」
        講師  フリーアナウンサー  北村 浩子 氏

 FMヨコハマ「books A to Z」でたくさんの本を紹介されてきた北村さんをお迎えしての今回の講演。ラジオでの「その本読んでみたい」と思わせる素敵な語り口とその声の「魅力」で、以前より講師希望上位に名前が挙がっていました。今回の講演では技術的な内容に留まらず、ご自身の読書への想いや近況なども踏まえ、あらためて本を薦めること、好きになってもらうことの意味についてお話していただきました。文字通り「生の声」が聞くことができてファンはもちろん多くの会員が満足した内容となりました。

<会員の感想より>
・一番図書館員が悩んでいる部分を直球で取り上げていただいてよかった。話も上手かった。永遠のテーマであるが、大きなヒントを得られたと思う。
・100冊のうち1冊でも届けばよいという言葉に勇気づけられた。読書は無理して行うものではないが、趣味の入口として図書館が役割を果たせればと思っている。今日の話を聞いて、今は興味がなくても、あるときふと「こんな本が学校にあった」と思い出してもらえるような種を蒔きたいと思った。
・北村さんの話を聞けて嬉しかった。本を紹介してもらえたところは、まさにリアル「books A to Z」で、夢のような時間だった。


2016(平成28)年度 冬期全体研究会の報告

2016(平成28)年度 冬期全体研究会 12月1日(木) 県立湘南高等学校

【午前の部】
 分科会(地区研究発表)
第1分科会 横浜中地区「毎日の仕事を楽(スムーズ)に〜選書・廃棄&グッズ〜」

第2分科会 横浜南地区「図書館の基準を考える」

第3分科会 県央地区 「学校司書のスキルを考える」

【午後の部】
 講演 「本への興味 広げて深めて」
 講師  作家  大崎 梢(おおさき こずえ)氏

 大崎さんは、『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』で2006年にデビューした、元書店員・神奈川県在住の作家。
 事前に寄せられた大崎さんへの質問に答える形で講演が始まり、分かりやすい言葉でひとつひとつの質問に丁寧に答えていただいた。質疑応答では、こちらにも質問を投げかけていただき、双方向コミュニケーションができた。

<会員の感想より>
・作家さんを知ると、作品の見方も変わり、生徒への薦め方も違ってくるので、大変よい機会になった。
・大崎氏の誠実なお人柄を感じて、ほっこりしました。今後作品を読むときも、著者を紹介する時も、今日感じたイメージを思い出せそうです。
・是非、個性のある神奈川の学校図書館を取材していただいて、学校司書が登場する作品や、学校図書館を舞台にした作品を書いてもらいたいです。

2016(平成28)年度 夏期全体研究会の報告

2016(平成28)年度 夏期全体研究会 8月23日(火) かながわ県民センター

【午前の部】
   講演 「Library NAVI」
   講師  県立横浜南陵高等学校  田子 環
       県立田奈高等学校    松田ユリ子
       県立柏陽高等学校    臼田 玲子
       県立津久井浜高等学校  亀田 純子
       県立秦野総合高等学校  宮永 敏明

 Library NAVIの説明、図書館や授業での活用など様々な場面での実践報告があり、その後会員が自身の自己紹介ナビを作るワークショップを行った。そのナビを交換しながら1対1の自己紹介をする大交換会が行われ、会場のあちこちで会話がはずんでいた。
 あまり話をしたことがない会員とも交流が深まり、神奈川で生まれたLibrary NAVIの可能性を再確認できた。

<会員の感想より>
・100人以上でのワークショップ、交換会は面白かった。Library NAVIのコミュニケーションツールとしての機能を改めて実感しました。

【午後の部】
   講演 「合理的配慮の義務化が学校図書館にもたらすもの」
   講師  専修大学文学部教授 野口 武悟 氏

 4月に障害者差別解消法が施行され、公共図書館には障害のある生徒への合理的配慮の提供が義務化された。今回の義務化は、学校図書館のこれからに何をもたらすのか。義務化を受けて学校図書館として、とるべき対応を考えるきっかけとなった。

<会員の感想より>
・「合理的配慮」「インクルーシブ」と言われても、何をどうすればいいのか分からなかった。生徒ひとりひとりのニーズをきちんと拾い上げていく環境づくりを心がけていけばいいのかと理解できた。
・とても役に立つ内容でした。現在一番足りていないサービス部分について、具体的にこれからやるべきことを描けた思いです。

2015(平成27)年度 冬期研究会の報告

2015(平成27)年度 冬期研究会 12月1日(木) 神奈川県立地球市民かながわプラザ

【午前の部】分科会(地区研究発表)
第1分科会 横浜北地区
        「読書興味のギャップを埋める!!−司書も使えて、生徒も喜ぶ。」
第2分科会 湘南地区  「学校図書館の活性化〜展示について考える〜」
第3分科会 相模原地区 「断捨離〜廃棄を考える〜」

【午後の部】講演 「本の魅力、届け続けて」
      講師 内田 剛さん
         (書店員 三省堂書店 「本屋大賞」創設メンバー)
 手書きPOPを書くきっかけとなった1冊の本との出会い、その後POPを1日1枚ずつ書き続けたことで『POP王の本』の出版につながったこと、書店や出版業界の現状、「本屋大賞」の誕生から現在までを幅広くお話しいただいた。
 書店と地域・学校との連携、本に興味を持ってもらうための思いは学校図書館とも通じるものであり、POP講座のお話も併せて学ぶことの多い講演だった。

<会員の感想より>
・厳しい現状に闘志を秘めながら、寛容かつ真面目に取り組む姿勢に共感した。本に対する深い思いが伝わってきた。
・本に対していかにして興味をもってもらえるか、次につなげていくかは書店さんでも図書館でも同じだと分かった。講師の姿勢、志、手法に学ぶべきことが多いと思った。
・本が好きだという気持ち、届けたいという気持ちが形になっていくということが伝わってきました。

2015(平成27)年度 夏期研究会の報告

2015(平成27)年度 夏期研究会 8月20日(木) かながわ県民センター

【午前の部】
  座談会 「研究会のあゆみと展望
          〜諸先輩方が語る神奈川の学校図書館と学校図書館員〜」

 神奈川県学校図書館員研究会の60周年を記念して、8名の先輩を迎え座談会を行った。
「この10年を中心に全国からみた神奈川の研究会」「研究会の創成期」「学校司書として」「私学からみた研究会の活動について」「授業連携について」「ハワイの学校図書館見学の頃」「地区研究活動について」「私学の会員として」と多岐にわたるテーマでお話をいただいた。
先輩方の学校図書館の発展を願う情熱と地道な活動の積み重ねがあってこの会が誕生し、60周年を迎えることができた。

<会員の感想より>
・研究会の長い歴史をあらためて考えさせられました。自分も現状に甘んずることなく現状を打破すべくがんばらねばと思いました。
・泣けました。研究会大切にしないと!

【午後の部】
  トークショー「読むこと、書くことの幸せ」 ゲスト 小説家 辻村深月さん

 作家の辻村深月さんは、当研究会では『島はぼくらと』(講談社)で第7回神奈川学校図書館員大賞(KO本大賞)を受賞された。それがきっかけとなり、今回のトークショーが実現した。
小学校時代の学校図書館司書との出逢い、中学生からの公共図書館利用による読書の広がり、高校時代の読書仲間の存在、そして好きな作家や創作のきっかけなどを幅広くお話いただいた。そのお話しぶりからは本を読むことの楽しさや、ワクワク感が伝わると同時に、本がコミュニケーションツールになったというお言葉は司書として心に残った。

<会員の感想より>
・作家さんのトークショーというのは初めてでした。とてもわかりやすく、おもしろく聞かせて頂きました。すごく聞きやすかったです。
・辻村さんの話がお上手で、対談者側と話題のやりとりで"素"な感じの話も聞くこともできて良かったです。

2014(平成26)年度 夏期研究会の報告 

 2014(平成26)年度 夏期研究会 8月20日(水) かながわ県民センター

<午前の部> 活動報告「中高一貫校の学校図書館」

 中高一貫校の学校図書館で、学校司書はどのような取組を行っているのか。中高一貫校に勤務経験のある、県立、市立、私立の会員3名が報告を行った。高校生に比べ、中学生の図書館利用が旺盛であることはどの学校も同じだった。図書委員会活動は、中高合同のところもあれば、別々に行っているところがあった。司書の他に複数の学校図書館担当職員がいる学校が多く、活発に利活用されている様子が報告された。

<午後の部> 講演「思春期のココロとカラダの処方箋in神奈川」
講師 静岡県立こども病院医学図書室司書 塚田薫代(つかだ しげよ)氏

 塚田氏は、医師や看護師に向けた医学図書室のスタッフとして働くほか、患者やその家族向けの医学図書を提供したり、“わくわくぶんこ”を創設し、入院している子供たちへ本を届けたりしている。講演は多岐にわたり、医学図書室では、根拠ある新しい医学情報の他、闘病記や絵本など、病を得た人たちの心を支える本が重要である等の他、発達障害をかかえた利用者への対応例、健康情報サイトの評価の方法についてもお話しいただいた。また、患者さんとの本を通じたやりとりの一例をご紹介くださり、会場の人は皆胸を打たれた。


2013(平成25)年度 冬期研究会報告

 2013(平成25)年度 冬期研究会 2013/12/4(水) 大和市生涯学習センター


【午前の部】分科会(地区研究発表)
第1分科会 横浜北地区 「図書館のPRを考える」
第2分科会 横浜中地区 「オリエンテーションをバージョンアップ!」
第3分科会 横浜南地区 「学校図書館100連発!」

【午後の部】講演 「1950年から2000年にかけての公立高校学校司書の図書館実践」
     講師 高橋恵美子さん
         (法政大学・東京学芸大学非常勤講師、日本図書館協会学校図書館部会部会長)
 高橋さんは、2010年に神奈川県立高校の学校司書を定年退職された後、大学で非常勤講師をされる傍ら東京大学大学院修士課程に入学され、 『1950年から2000年にかけての公立高校学校司書の図書館実践 −教科との連携と「図書館の自由」の視点から−』という修士論文をまとめられました。 今回はその論文を元に、学校司書の学校図書館専門職員としての職の構築の過程、今の学校図書館がどのようにつくられてきたかをお話いただきました。
 学校司書配置の変遷に始まり、その活動の特徴、特に1980年代以降の、レファレンスサービスの蓄積や図書館利用指導から学校図書館と教科学習との連携へ、 「図書館の自由」に関する諸活動など、仕事の領域を広げていった学校司書の半世紀の歩みをたどるお話でした。
<会員の感想より>
 ○これまでの学校司書の職務の変遷を知ることが、今後の活動の方向性に意味を持ちました。
 ○「学校司書」という職の位置づけ、あり方、果たしていく役割について理解を深めることができました。
 ○質問も含めていろいろ考えさせられ、刺激になった。2000年以降の動きもまとめて研究してほしい。

2013(平成25)年度 夏期研究会の報告

 2013(平成25)年度 夏期研究会 2013/08/20(火) かながわ県民センター

<午前の部> 活動報告「進学校の学校図書館」

進学校の図書館は、自習利用が多い、生徒や教員が多忙、などの特徴があるといわれている。そんな中で、学校司書としてどのような図書館活動ができるのか、進学校に勤務経験のある3名の会員が報告を行った。

1)「21世紀の学校図書館をめざして」  県立高校学校司書

進学校だった前任校の図書館での活動について、当時の写真等を交えながら報告。旧態依然としていた学校図書館を、進学重点校という学校方針に合わせつつ、また公私を両立させながら、21世紀にふさわしい学校図書館にするべく内部から改革していった経緯が、ワーク&ライフ年表を使って具体的に説明された。

2)「『進学校』って特別?」  県立高校学校司書

今回の学習会に先立ち、県内の進学校(県立18校、横浜市立3校、私立1校)に対して電話インタビューを実施し、インタビューのうち、「授業利用等」「利用される資料」「広報」の3項目の回答を報告。また、現在の勤務校での活動内容について、県立図書館での勤務経験をふまえ、生徒や教員に対して多方面からアプローチして成果を上げている様子が報告された。

3)「進学校の図書館」  県立高校学校司書

県内の進学校に実施した電話アンケートのうち、「図書館の利用目的」「生徒の特徴」「運営の工夫」の3項目の回答を報告。また、勤務校に着任して試行錯誤しながら図書館を運営してきた様子や、「進学校であることも学校図書館の特色」と捉え、折り合いをつけながら地道に活動してきた結果、図書委員に自主性が出てきた様子などが報告された。

<午後の部> 講演「いま、出版をやるということ」
        講師  ミシマ社代表  三島 邦弘氏

 「自由が丘のほがらかな出版社」ミシマ社は、どのようにしてつくられたのか。ご自身の経歴から設立のきっかけ、本づくりや出版に対する考え方まで、三島氏の熱い想いが伝わってくる講演をいただいた。メディアの仕事とは、発信することではなく媒介することだと気付かされるきっかけになった本として『異界を旅する能』(安田登著/筑摩書房)が紹介された。興味を持った会員も多かったことだろう。質疑応答でもひとつひとつの質問に対して丁寧にお答えいただいた。

*アンケートより*
・ 「小さな声に耳を澄ませ、その声を発する人たちのところへもっとも届く形でお届けする」というみんなのミシマガジンに書いてある言葉が学校図書館そのものである。
・ 「本はマーケティングではない。その人が読みたい時が出会い」という三島さんの言葉に感動。
・ 前向きなパワーを分けていただけたように思います。




2012(平成24)年度 冬期研究会

 平成24年度 冬期研究会 2012/12/5(水) かながわ県民センター


【午前の部】 分科会(地区研究発表)
第1分科会 川崎地区     テーマ:「実践!ビブリオバトル」
第2分科会 横須賀三浦地区  テーマ:「図書委員会、イベントやりました!」
第3分科会 湘南地区     テーマ:「学校図書館をほめたい」
第4分科会 相模原地区    テーマ:「小中学校での体験を踏まえた高校図書館での利用者教育を考える」


【午後の部】 講演 「青春相談室『田奈Pass』の取り組みを通して考える若者就労支援の未来
       −顔の見える相談員じゃなきゃ意味がない理由−」
         講師  株式会社シェアするココロ代表取締役社長 石井正宏氏


 2012年6月に神奈川県立田奈高校内にオープンした青春相談室『田奈PASS』は、個別相談のほかに、図書館での交流相談の場を設けています。『田奈PASS』の出張相談員でもある石井氏より、青春相談室の様子や若者支援の現状についてお話を伺うとともに、学校図書館や学校図書館職員の持つ役割や可能性についても提起をいただきました。


<会員の感想より>
○なぜ図書館で相談業務を行っているのか、その有用性や可能性を伺うことができました。何となく悩みを持ちつつ、相談できずにいる生徒は本校にも居り、司書としてできることはないか模索しています。 本日の講演から学ばせていただいたことを明日からの業務に反映したいと思います。
○生徒にとっては、社会・大人との最初の接点になる場所としての図書館の意義、文化のシャワーを提供する貴重な場としての図書館の機能など、学校図書館の新たな可能性に気づかされた。
○教員とは違う視点、というのはなかなか学校内にある図書館や司書では難しい面もあるけれど大切なことだと思いました。また、学校と社会との「かけはし」についても考えなければと思いました。



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